碌山美術館 文覚って誰やねん?
碌山美術館の煉瓦の赤と緑の組み合わせが綺麗だったので、通りすがりに外から撮ってみました。(^^)
碌山美術館は大王わさび農場と並んで、安曇野の観光案内のパンフレットには必ず出てくる有名な美術館です。
僕は地元に住んでいながら、碌山美術館の中へは、3度ほどしか入った事がありません。なにせ芸術がよく分からないせいか、どこも、美術館には、長いこと居られません。碌山の作品も、作品そのものを見るというより、僕の場合は、物語を通して見るって感じになってしまいます。(^^;
碌山美術館には、皆さんご存知の通り、東洋のロダンと言われた安曇野出身の荻原碌山の作品が展示されているわけですが、その中でも今回は「文覚」という作品について書いてみようと思います。(^^;
上の写真は左から「女」「文覚」「坑夫」と、碌山の代表作の中から3つ並べてみました。特に「女」は近代日本彫刻の最高傑作と言われる象徴的な作品です。「女」は碌山が恋い慕った相馬黒光がモデルってのが、定説なわけですが、黒光は、碌山が敬愛した相馬愛蔵の妻だったわけで、決して実らぬ恋だったわけです。
碌山を語る上で、相馬夫妻は外せない要素で、ここでは相馬夫妻の紹介は簡単に済ませますが、碌山と同じく安曇野の穂高出身で、カリーの新宿中村屋の創設者です。碌山は、フランスから帰国後、新宿中村屋の2階に仮住まいし、近くのアトリエに通って作品制作をしとります。
「女」は暖房器具もないアトリエで、塑像を作る為の粘度が凍らないように毛布から自分の服までも覆いに使って、そんな中から生み出された作品のようで、「女」完成後、暫く後、碌山は中村屋で吐血して倒れますから、まさに、命をかけた作品って感じです。
こうした碌山の作品の中で、随分前に碌山美術館に入った時に僕が興味を持ったのは「文覚」です。単純に文覚って誰やねん?っていう程度の興味でしたけど・・・。(^^;
文覚は鎌倉時代の奇僧、文覚上人(もんがくしょうにん)のことです。大雑把な説明を書きますと、文覚上人は平安時代末期の若い頃、法皇警護の北面の武士で、かなりの荒くれ者だったようです。その時に、人妻に恋し、その旦那を殺そうと思って、誤って、女の方を殺してしまいます。付きまとった挙句に、これですから、かなり、やばめのストーカーです。(^^;
この事件後に、出家して荒行をして僧になるわけですけど、相変わらず、色々とトラブルを起こしていたようです。この文覚はやがて、源頼朝に近づき、平家打倒の決起を促し、また、その為の工作活動を行っていたようです。文覚の頼朝への影響は大きかったようで、もし、文覚がいなかったら、頼朝の決起は無かったかもしれないほどだったそうです。
鎌倉幕府成立後は、文覚は権力には一切、近づかず、数々のお寺を再建したり創建していたようですが、頼朝の死後は、謀反の疑いをかけられて、島流しにされ、最後は流された先の対馬で亡くなっているみたいです。なかなか波乱万丈です。(^^;
実は、碌山はパリから帰国後にスランプに陥り、作品が作れなくなるわけですが、その時に黒光が碌山を気分転換に連れ出します。その連れ出した先が、鎌倉の成就院というお寺で、そこには、文覚が彫ったと言われる木像があり、それを碌山は見て、インスパイアされ、復活します。
文覚も若い頃、人妻に恋してたわけで、それに碌山は自分をだぶらせたのかもしれませんね・・・。
少なくとも、碌山を連れ出し、スランプを脱するきっかけを黒光は作ってますし、「女」だけでなく「文覚」という作品にも、黒光が大きく影響している事は確かなように僕は思います。
もう何年も前ですけど、この物語を知った後、僕は「文覚」を見る為だけに、もう一度、碌山美術館に入ったのを、今日、碌山美術館の写真を撮りながら、懐かしく思い出しました・・・。(^^;
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