オバマ大統領の広島訪問と山本幡男さんの遺書

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オバマ大統領が広島を訪問した。

オバマ大統領の広島訪問には賛否両論あり、謝罪をしないなら来るな!といった意見もあった。でも、僕は訪問してもらって良かったんじゃないかと思う。オバマ大統領のスピーチも悪くなかったと思うし・・・。

たしかに、アメリカの原爆投下は実のところ実験の意味合いが大きかったと思うし、道義的に許されるものではないと思う。でも、全てはオバマ大統領と会った被爆者の方の表情や感想が物語っていたように僕は思う。全体として、こういった悲劇を二度と繰り返さないように、より良い未来を作っていこうという意志が感じられ、そういった意味合いを持つ広島訪問になったんじゃないかと思うのだ・・・。

海外掲示板などを見ると、今度は安倍総理がパールハーバーへ謝罪に行くべきだとか、原爆投下に関しては、日本も悪かったとか、いや、アメリカが悪いとか、誰が誰に謝罪をするべきだとか、そんなコメントが溢れていた。中韓に至っては、聞くに耐えないような醜悪さまで感じるコメントが並んでいる。

でも、当の被爆者の方は、誰が悪いとか、誰が謝るべきとか、そんな事は言っていない。言われていた事も、表情も、より良い未来を作る為に、前向きなものだった。オバマ大統領と抱き合っていた被爆者の方の一人は、原爆投下で亡くなった米兵捕虜の身元をずっと探してきたんだとか・・・。まるで次元が違うのだ。

そこから海外掲示板などに目を移すと、誰が悪いとか、誰が謝るべきとか、そんなコメントが並んでいるわけで、僕の感覚では、そうじゃない!!って感じだ。

 

世界は血で血を洗う宗教戦争の連続だけれど、日本では宗教戦争は、ほとんど起こっていない。だから日本のこの宗教的寛容の精神は世界に広まればいいと僕は思う。そういう意味では、今回のG7が伊勢志摩で行われ、各国首脳が伊勢神宮へ参拝した事は、一つ暗示的な大きな出来事だったのかもしれない・・・。

 

かつて、シベリアに抑留された日本兵の中に山本幡男さんという方がいた。極限状態の収容所生活の中で、必ず帰る日はやって来ると、句会を開くなどして同胞を励まし続け、皆に親しまれていた。しかし、ついにガンに倒れ命を落とす事になる。当時は帰国の際も、収容所からは紙一枚持ち出す事が出来なかったので、山本さんに世話になった男達は、山本さんのノート15ページにも及ぶ遺書を分担して、厳しい労働の合間をぬって丸暗記し、家族の元に届けるのだ。恩ある人の思いを必ず家族の元に届けるという男達の思いに、この物語を何度読んでも僕は泣けてくる・・・。

4通ある遺書は涙なくして読むことはできないが、特に子供たちへ宛てた遺書は、現代の我々日本人皆に宛てた遺書と言っても良い内容だと僕は思う。

以下、佐藤守さんのブログより子供たち宛ての遺書を転載させて頂きました。

子供らへ。

 

山本顕一、厚生、誠之、はるか  

君たちに会へずに死ぬることが一番悲しい。成長した姿が、写真ではなく、実際に一目見たかった。お母さんよりも、モジミ(夫人のお名前)よりも、私の夢には君たちの姿が多く現れた。それも幼かった日の姿で・・・あゝ何といふ可愛い子供の時代!

 

君たちを幸福にするために、一日も早く帰国したいと思ってゐたが、倒頭永久に別れねばならなくなったことは、何といっても残念だ。第一、君たちに対してまことに済まないと思ふ。

 

さて、君たちは、これから人生の荒波と戦って生きてゆくのだが、君たちはどんな辛い日があらうとも光輝ある日本民族の一人として生まれたことに感謝することを忘れてはならぬ。日本民族こそは将来、東洋、西洋の文化を融合する唯一の媒介者、東洋のすぐれたる道義の文化――人道主義を持って世界文化再建に寄与し得る唯一の民族である。この歴史的使命を片時も忘れてはならぬ。

 

また君たちはどんなに辛い日があらうとも、人類の文化創造に参加し、人類の幸福を増進するといふ進歩的な思想を忘れてはならぬ。偏頗で矯激な思想に迷ってはならぬ。どこまでも真面目な、人道に基づく自由、博愛、幸福、正義の道を進んで呉れ。

 

最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。友達と交際する場合にも、社会的に活動する場合にも、生活のあらゆる部面において、この言葉を忘れてはならぬぞ。

 

人の世話にはつとめてならず、人に対する世話は進んでせよ。但し、無意味な虚栄はよせ。人間は結局自分ひとりの他に頼るべきものが無い――という覚悟で、強い能力のある人間になれ。自分を鍛えて行け! 精神も肉体も鍛へて、健康にすることだ。強くなれ。自覚ある立派な人間になれ。

 

四人の子供達よ。

お互いに団結し、協力せよ!

特に顕一は、一番才能に恵まれているから、長男ではあるし、三人の弟妹をよく指導してくれよ。

自分の才能にうぬぼれてはいけない。学と真理の道においては、徹頭徹尾敬虔でなくてはならぬ。立身出世など、どうでもいい。自分で自分を偉くすれば、君らが博士や大臣を求めなくても、博士や大臣の方が君らの方へやってくることは必定だ。要は自己完成! しかし浮世の生活のためには、致方なしで或る程度打算や功利もやむを得ない。度を越してはいかぬぞ。最後に勝つものは道義だぞ。

 

君らが立派に成長してゆくであらうことを思ひつつ、私は満足して死んでゆく。どうか健康に幸福に生きてくれ。長生きしておくれ。

 

最後の自作の戒名

久遠院智光日慈信士

 

一九五四年七月二日           

山本幡男

 

どうだろうか?
道義の大切さ、人道に基づく自由、博愛、幸福、正義、人の世話にはつとめてならず、人に対する世話は進んですること、虚栄をなくし自己鍛錬する事、そして世界への貢献と、まさに現代の日本と日本人に向けて送られたメッセージのように僕には思えて仕方ないのだ。

広島でのオバマ大統領もスピーチの中で「道義」という言葉を使われていたが、日本という国が道義を貫ける国であって欲しいと思うし、この原爆の件もそうだけれど、日本の精神を世界の人に知ってもらう事によって、大きく日本は世界貢献できると僕は思うのだ。

「最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。」

この山本幡男さんの言葉を僕は信じたいし、それを貫き、世界貢献できる日本であって欲しいと思ったりするのだ・・・。

 

 

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YASUKE YAMURA

これまでのコメント

  1. 岩本 義也 より:

    おはようございます。全文を読ませて頂きました。
    子供たちに宛てたメッセージ、とても感動しました。
    その内容は決して、色褪せず現代の日本人に対する
    こうあって欲しいという願いであるかのように受け
    止めました。ありがとうございます。

    新書をアマゾンで注文しました。

    • 矢村やすけ より:

      お読み頂きありがとうございます。
      まさに、現代の日本と日本人に対するメッセージのようですよね。
      この山本さんの遺書に書かれている事を我々は引き継ぐべきだと僕は思いますし、日本の大きく和する精神を世界に伝えていく事ができれば、もしかしたら、世界はより良く変わるかもしれない・・・。そんなふうに思っています。(^^)

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