「葵」っていう字が入ってる植物の名前ってやたらと多いんだけど「葵」ってなんだ?
Facebookでの会話に、たまたま二葉葵(フタバアオイ)の話が出てきて、そこから、カンアオイ、タチアオイ、ゼニアオイ、テンジクアオイだのと、次々と会話に葵(アオイ)が出てきました。
同じ「葵」が名前に入ってるけど、フタバアオイとカンアオイはウマノスズクサ科で、タチアオイとゼニアオイはアオイ科、テンジクアオイはフウロソウ科と、全く仲間が違っているのだ・・・。(^^;
そして、よく考えたら、アオイと読まなくても「葵」って漢字が入っている植物もあるわけで、例えば、山葵(わさび)、向日葵(ひまわり)、蒲葵(ほき or びろう)だと、それぞれ、アブラナ科、キク科、ヤシ科と、もはや植物としての関連性は極めて乏しい・・・。(^^;
さらに、人の名前や地名にも「葵」という文字は多く使われているし、黄門様の印籠の葵の御紋に代表されるように、家紋や神紋なんかでも使われているわけで、「葵」って一体、なんなんだ?と調べてみることにしたのだ。
とりあえずYAHOOの辞書検索の国語辞典で「葵」を検索すると、以下のように出てきた。
葵
① アオイ科の植物,タチアオイ・ゼニアオイ・モミジアオイなどの総称。 [季] 夏。 ② フタバアオイのこと。カモアオイ。 ③ フユアオイの古名。 「延(は)ふ葛(くず)の後も逢はむと-花咲く/万葉集 3834」 ④ 「 葵襲(あおいがさね) …
大辞林 第三版葵
[人名用漢字] [音]キ(漢) [訓]あおい〈キ〉植物の名。アオイ。「紅蜀葵(こうしょっき)」〈あおい〉「立葵・天竺葵(てんじくあおい)・二葉葵(ふたばあおい)」[名のり]まもる[難読]向日葵(ひまわり)・蒲葵(びろう)・山葵(わさび)
デジタル大辞泉葵
1㋐アオイ科のフヨウ属・アオイ属に含まれる植物の総称。タチアオイ・モミジアオイ・トロロアオイ・ゼニアオイ・フユアオイなど。《季 夏》㋑アオイ科の双子葉植物の総称。温帯から熱帯にかけて分布し、75属1500種ほどある。フヨウ・ムクゲなど。㋒フ …
デジタル大辞泉
基本的に、植物の名前が並んでいるわけだけど、この並んでいる植物をすごく大雑把に分けると、アオイ科とそれ以外って感じになる・・・。
アオイ科の植物って?
以前にも少し投稿した事があるんだけど、アオイ科ってかなり広い。タチアオイ、ハイビスカス、フヨウ、ムクゲ、野菜のオクラや作物のワタやケナフなんかも、み~んなアオイ科!!ギンセンカみたいな例外もあるけど、基本的に、アオイ科の花って、みな大型で派手なイメージ。
芙蓉の花
モミジアオイ【紅蜀葵(こうしょっき)】
次に漢字辞典-OK辞典ってので、「葵」って漢字の成り立ちを調べてみた。
会意兼形声文字です(艸+癸)。「並び生えた草」の象形と「二本の木を十字に組み合わせ日の出、日の入りを測り、東西南北の方位を知る器具」の象形(「測る」の意味)から、「測る」、「あおい(四方に向けて花びらが開く花)」を意味する「葵」という漢字が成り立ちました。
なるほど!そういう意味なら、アオイ科の花は、みんな大きくそんなイメージだし、キク科のヒマワリ(向日葵)も、そのイメージにはピッタリだ。(^^)
しかし、ちょっと待った!!ここ安曇野名産の山葵(わさび)は小さな白い花で、ちょっとイメージが違うぞ!!
山葵の花
ということで、山葵(わさび)の語源を調べてみた。
どうも、はっきりした事は分かっていないみたいだけれど、「鼻につんとくる辛さ」を表現した「悪障疼(わるさわりひびく)」という言葉を略したものっていう、食べた時の感触や味に由来するという説と、わさびの葉っぱが「葵」に似ていることから「早葵(わさあふひ)」が転じたものではないかという説があるようだ。
ここで言う「葵」は葉が似ているということだから、間違いなくフタバアオイだ。
フタバアオイは、京都の賀茂神社の神紋で、フタバとついてるくらいだから、葉が二枚の植物だ。それに対して、徳川葵の御紋は、三つ葉葵だ。でも、三つ葉葵なんて植物はなく、フタバアオイの葉をデザインで3枚描いてる代物なのだ。
フタバアオイとカンアオイ
フタバアオイはアオイ科ではなく、ウマノスズクサ科カンアオイ属の植物で、その花と外見からは、両者とも、「葵」という漢字の成り立ちに由来にしてるとは、とても考えられない植物だ。
フタバアオイがカンアオイ属に属しているなら、フタバアオイの上位にカンアオイがあるのかと、カンアオイを調べてみると、カンアオイはフタバアオイと同じくハート形をした葉で、常緑の植物だ。その為、寒い時期でも青いってところから、寒葵(カンアオイ)と名前がついたのではないかという一つの想像ができる。
そして、フタバアオイは常緑ではないけれど、そのカンアオイに葉が似ていて、二葉だからフタバアオイってことかなと、最初は、そう思いました。
ところが・・・
徐福伝説とカンアオイ
秦の始皇帝の命を受け、徐福という人物が不老不死の仙薬を求めて旅に出た話をご存知の方は多いと思いますが、その徐福が佐賀県の金立山で仙人に出会い、不老不死の薬を授かったという伝説があるそうです。その不老不死の薬がフロフキ(不老不死の意味)と呼ばれるカンアオイだったそうです。そして徐福が旅に出た時期は紀元前210年頃らしい。
葵祭の葵桂
先程、京都の賀茂神社の神紋がフタバアオイだと書きましたが、その有名な葵祭を調べると、葵桂と呼ばれる葵と桂の葉をからませて作った飾りが出てきます。この葵はもちろんフタバアオイです。そして、この葵桂を調べると、こちらのページに以下のような記載がありました。
桂の葉と葵の葉は形がよく似ているが、桂は天に向って聳えるのに対し葵は地表近くにある。
このことから桂を「陽・天・男」の、葵を「陰・地・女」の象徴としたものと思われる。
また、次のような記載も。
葵桂の陰陽(女男・夫婦)祭。
ヒコホオテミとトヨタマ姫の故事 (26文) に由来する。
とある。つまり、葵祭の葵、つまりフタバアオイの由来は、トヨタマ姫の時代まで遡ることになる。トヨタマ姫は神武天皇のお祖母さんにあたるんだけど、その神武天皇の在位は日本書紀には紀元前660年からとある。
先程の徐福が始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を探しに出かけたのが、紀元前220年頃、そして佐賀県の金立山でフロフキと呼ばれるカンアオイに出会っている。それに対して、葵桂の由来から、徐福がフロフキに出会う少なくとも400年以上前に、既にフタバアオイは葵と呼ばれていた事になる・・・。
これだと、常緑のカンアオイに似てるからフタバアオイっていう名前の由来は成立しなくなってしまう。それとも、徐福が佐賀県にやって来る400年以上も前に、カンアオイっていう名前が既にあったのだろうか・・・。つまりフタバアオイがなぜ「葵」とつくのかは、謎なのだ・・・。(^^;
僕なりの葵の名前の由来まとめ
1.アオイ科を中心に多くの葵と名のつく植物の名前は、その形状から「葵」という漢字の成り立ちに由来している。
2.山葵(わさび)など「葵」という漢字の成り立ちに由来していないものは、フタバアオイに由来している可能性がある。
3.カンアオイは常緑であることから寒葵となったと想像できる。
4.フタバアオイが、なぜ「葵」かは謎。
Facebookでの会話で気になって調べてしまったけど、漢字の成り立ちから神話の世界にまで行きつき、なかなか、勉強になったのだ・・・。(^^)
Thank you for my study japanese.
You are welcom.
That’s nice of you to say so.
Thanks!! 🙂