新宿中村屋創業者の相馬愛蔵の生家に立ち寄ってみて・・・
久々に朝からいいお天気だったので、常念岳でも撮ってみようかと大王近辺まで行ってみましたが、残念ながら常念岳は雲に隠れていたので、相馬愛蔵の生家に立ち寄ってきやした。
相馬愛蔵生家
相馬愛蔵は旧制松本中学(現松本深志高校)を3年で中退し、東京専門学校(現早稲田大学)に入学しました。そこで、友人に誘われて、牛込市ケ谷の牛込教会へ通うようになり、クリスチャンの洗礼を受けています。卒業後は、札幌農学校へと進み、養蚕学を学んでいます。
その後、故郷の穂高に戻り、「蚕種製造論」という本を著し、全国の養蚕家に注目されたりしたようです。この時点でまだ22歳だったようですから、今の感覚で考えると凄いもんです。その穂高で東穂高禁酒会というのを作り、村でキリスト教と禁酒を勧めたり、廃娼運動を行ったりと、色々と活動をしています。
孤児院基金募集のため仙台へ出掛け、仙台藩士の娘・星良(相馬黒光)と知り合い、結婚します。ちなみに星良は「せいら」と読んでしまいそうになりますが、「ほし りょう」と姓名です。(^^;
この穂高時代にも、井口喜源治や荻原碌山との関わりなど、色々な物語があるんですが、長くなるので割愛させて頂きやす。(^^;
穂高時代を経て、相馬夫妻は再び東京に出て、東大赤門前のパン屋本郷中村屋を買い取り起業します。明治37年に日本で初めてクリームパンを発売し、その後も次々と新商品を発売して現在の新宿中村屋の礎を築いていきます。
相馬夫妻は店の裏にアトリエを作って、荻原碌山や戸張狐雁、會津八一などの芸術家に使わせていました。ここから、中村屋には芸術家や文化人などが集まるようになり、中村屋サロンと言われる社交場が形成されていきます。そして、相馬夫妻の交友関係は、芸術家だけにとどまらず、木下尚江や内村鑑三さらには右翼の大物、頭山満にまで及びます。また国内の人物だけに留まらず、ロシアの盲詩人エロシェンコの面倒をみたり、インドから亡命してきた独立運動家ラス・ビハリ・ボースをかくまったりしています。そして、この中村屋サロンの中心には常に妻の黒光があったようです。
当時、右翼の大物、頭山満はアジアの独立運動の支援に関わっていました。その関係で相馬夫妻は、頭山満に頼まれて、イギリスの追っ手を逃れて日本に亡命して来たインド独立運動家のラス・ビハリ・ボースをかくまいます。日英同盟下にあった日本はボースの引渡しを要求されており、英国大使館の執拗な追求の中、文字通り命がけでボースをかくまい通します。ボースには長女まで嫁がせています。この縁により生まれたのが、中村屋の日本初の本格的なインドカリーです。
戦後来日した、ネール首相やパール博士などのインド要人は、みな、インド国民の名において中村屋に敬意を表したんだとか・・・。要人が国民の名において敬意を表するって、最大級の敬意ですよね。それが一商店に向けられたものであるってのは鳥肌もんです。
上に書かせて頂いた通り、相馬夫妻の交友関係は社会主義の運動家から右翼の大物にまでわたります。つまり、右とか左とかのこだわりもなく、その人物自身とつきあっています。世界を思い、無私無欲で誠実に生きている人に対しては、みな歓待し、心を開いてつきあっていたようです。
相馬愛蔵のエピソードとして、昭和金融恐慌時、銀行の取り付け騒ぎが起こった際、部下に金庫の有り金を全て持たせて、取引先の安田銀行にかけつけさせ、「中村屋ですがお預け!」と大声を出させて、群衆のパニックを収めたなんてのもあるようです。
とにかく相馬夫妻には人物の大きさを感じさせられます。
僕は相馬夫妻のような大きな人物には、とてもなれそうにありませんが、それでも、相馬夫妻のように、その人物自身と心を開いて付き合えるような自分でありたいとは、常々、思っています。(^^;
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