季節外れに咲く梅の花と花咲かホルモンなど植物ホルモンあれこれ
相変わらず、春のような日が続いとります。庭の梅も、全体的に蕾が膨らんできており、このままいくと、満開になるのではと思うような状態になってきています。ちなみに、この梅の花はもともとピンク系なんですけど、例年、春に咲いてるものに比べると、ピンクの色が濃く、まるで桃の花のようです。これも、こんな時期に咲いている影響なんでしょうか・・・。(^^;
梅の花芽は前の年の夏ごろに出来、秋、葉が散る頃に休眠に入ります。そして、春、休眠から覚めると、温度の上昇と共に生長し、開花しやす。そして、休眠打破するためには、ある程度の低温が続く事が条件になります。この仕組みによって通常、秋や初冬に少しくらい気温が上がっても、開花しない仕組みになっています。
しかし、調べてみると、梅の休眠打破の為の低温条件は、桜などに比べ緩いようで、気温だけだと、0~12℃程度のようですから、ここ安曇野では11月や12月の気温で満たされてしまう事になります。つまり、梅の休眠打破の為の低温条件が整ってしまっていたところに、この春のような気温で、花芽の生長が始まってしまい、こうして咲き出してしまったってことなのかなと思っています。(^^;
ちなみに、休眠打破の為の低温条件は梅の方が桜より緩いので、梅の方が休眠から覚めるのが早くなり、基本的には桜より早く咲き出すってことなんだと思います。(^^;
考えてみれば、雑草の種だって、春先、生長に適した環境になるまでは休眠して芽が出てこないわけですから、うまい事できていますよね。こういった気温や日照時間等の環境条件がトリガーになり、各種の植物ホルモンが生成されて、植物の生長が促されます。植物ホルモンの主だったものには、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシシン酸、エチレンがあります。
それぞれが、色々な役割をするんですけど、オーキシンとサイトカイニンは、高校時代に、ニンジンの組織培養をやってみたいと、生物の先生に無理を言って、取り寄せてもらい、使った事を憶えています。どちらも成長ホルモン系なんですけど、組織培養したカルスと呼ばれる細胞塊から茎と葉を再分化させてクローンを作る為に、サイトカイニンの量を多めにしたりと色々と調整をやった思い出がありやす。(^^)
エチレンは老化系で、特に果実で大量に作られるホルモンです。青いバナナとかにエチレンガスをかけると、黄色くなるなんて話は、皆さんもよく聞いた事があるのではないかと思いやす。
ジベレリンは、こちらのような田舎では、比較的、親近感のある名前だと思います。デラウェアなどの種なしブドウを作る時に、ジベレリン処理を行いますから。僕の親戚などでは、ジベと呼んでいたのを憶えています。ジベレリンも、色々な働きをするんですけど、子房の成長を促進する働きがあり、それが、種なしブドウを作る時に利用されているんだと思います。ジベレリンは、用途の広い成長系の植物ホルモンなんですが、日本で発見されたもので、ちょっと誇らしいですよね。(^^)
イネが苗の頃からひょろ長く伸びて、籾が実らなくなる馬鹿苗病ってのがあるんですが、この馬鹿苗病を引き起こすイネ馬鹿苗病菌(属名ギベレラ)の代謝産物からジベレリンは発見されました。そこからジベレリンって名前がついてるんでしょうね。なかなか、おもろいです。大学時代、馬鹿苗病からジベレリンが発見されたって話を講義で初めて聞いた時は、感動したのを憶えています。(^^)
戦後、世界の食糧増産をもたらした「緑の革命」ですが、この立役者は、コムギやイネの半矮性(はんわいせい)つまり倒れにくい品種でした。これらの品種は、ジベレリンの働きを抑えた品種であることが分かってきており、これも、また、おもろいところです。日本で発見されたジベレリン、大活躍って感じです。(^^)
アブシシン酸は、気孔を閉じたり、落葉する時の離層の形成を促進したりと、どちらかというと、老化系のホルモンなんですけど、種子の発芽を抑制したりもします。そして上に書いたジベレリンは、種子の発芽を促進します。なので、種子の休眠と発芽は、アブシシン酸とジベレリンでコントロールされてるって感じでしょうか・・・。(^^;
そして、植物ホルモンと言えば、最近になって発見されているフロリゲン(花成ホルモン)です。フロリゲンは花芽形成を促す、花咲かじいさんが撒いている灰のような、なんともファンタスティックな植物ホルモンです。これは1936年にロシアの学者によって提唱されて以来、その存在が確認できず、幻の植物ホルモンと言われていたようですが、このフロリゲンも2007年に、日本人の手によって、ついに発見されました。
ジベレリンと言い、なんか、植物ホルモン関係って、なかなか日本人は頑張っていますよね!!
なんか、同じ日本人として、ちょっと誇らしい。(^^)